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2022.10.03
何事にもメリット・デメリットがあるように、どこで医療を受けるにしても一長一短があります。療養生活において優先したいことがあれば、自ずとご自分やご家族に合った医療機関が決まるはずです。病院と在宅医療を比較されたい方向けに両者の特徴をまとめました。
まずは、病院と家で療養生活を支えるメンバーの違いです。病院には医師や看護師、薬剤師らがいて、一律に医療サービスを受けることができます。入院時には、看護助手や清掃スタッフが身の回りの世話をしてくれます。医療に必要なスタッフはいつでもスタンバイしています。
一方、家や施設のように住み慣れた場所で療養する場合は、医師が定期的に家に伺って診療し、計画的にケアや治療をする訪問診療を依頼することになります。その他に必要な医療サービスがあれば、各事業所を利用します。例えば、点滴や注射などの医療処置や身体介護等をしてくれる訪問看護、町の薬局にはないラインアップをそろえて24時間服薬管理・お届け対応などをしてくれる訪問薬局などです。ご病状と療養環境に合わせて、これらの事業所とそれぞれ契約します。また、身の回りのお世話や介護用品のレンタルなど生活面でのサービスが必要であれば介護関係の事業所と契約します。
こうした医療・介護サービスは、ご自分で探す方法と入院先の医療機関や行政などで紹介してもらう方法があります。私たちのような訪問診療所でも、ご利用者が安心してご自宅で療養生活を送るために医療相談員がお手伝いをさせていただいています。各サービスを利用する事業所が決まると、その方の療養生活を支えるチームとして、メンバーが密に連絡し合います。従って、患者様やご家族はチームの一人に連絡すればチーム全体で情報が共有されます。
このチームは自由にアレンジできるので、サービスを増やしたり減らしたり、と変更したりもできます。在宅医療チームはご利用者のニーズに合わせてサービス内容を組み合わせることができるオーダーメイドのチームとも言えます。
各病院は大きく急性期・回復期・慢性期と機能に応じた役割を担っています。一方、在宅医療は通院が難しい患者様が対象という大きな括りの中で役割を果たしています。両者の役割は重なる部分が多々あります。けれども、病院医療から在宅医療に移行できるタイミングという視点でみることで、両者の特徴がより明確になるでしょう。
急性心不全、急性期の脳梗塞など集中的な治療や予断を許さない病態の場合は、急性期病院での治療が必要です。また、CTやMRなどの大型装置を使う精密検査をして、手術や化学療法などの積極的な治療を希望される方は入院や通院の選択になります。在宅医療の選択肢が見えてくるのは、急激に体調が悪くなる急性期を過ぎたものの、引き続き定期的なケアや治療が必要な段階になります。
あるいは、治癒中ながら手術による入院を短期間で済ませたり、化学療法を外来で受けたりと、出来る限りご自宅で過ごされる場合になります。こうした術後・治療後の体調管理や副作用のコントロールを目的に、在宅医療を併用する方もいます。在宅医療は終末期の方向けというイメージを抱かれている方も多いですが、在宅医療での医療行為は、急性期の治療以外は病院とほぼ変わりません(「病院の医師も驚く! 在宅医療でできること4つのこと」 )。
入院中に何かあった際にナースコールでまず看護師を呼ぶのと同じように、在宅医療でもまずは看護師に電話します。医師の指示が必要な場合は、看護師から医師に報告して指示を仰ぐのは病院でも在宅医療でも同じです。病院内に医療者がいるフットワークの軽さにはかないませんが、在宅療養支援診療所でしたら24時間365日往診に対応しています(「目的に合わせた訪問診療クリニックの選び方」)。
在宅医療で医師が訪問できるエリアは患者様のご自宅から診療所まで直線距離で半径16㎞以内と決まっています。日中は他の患者様を訪問診療中だったり、夜間に他の患者様の対応と重なったりすると、医師の到着まで時間を要することもあります。楓の風では、その方の療養生活を支える医療者や介護者、ご家族の間で患者様の小さな変化に気づくことで大事に至らないように努めています。また、緊急時にご家族や介護者が慌てないように起こりうる症状や対応法を予めお伝えし、心構えをしていただいています。もしもの時は、患者様とご家族のご希望と、その方の疾病や病状などを医師が総合的に考えて、病院に搬送するのか、往診するのかなどを判断します。
同じ治療であれば、一般的に入院、在宅医療、通院の順に安くなります。目安として、月2回の定期的な訪問診療で基本的なご利用料金は、医療保険1割負担の方が約7,000円、3割負担の方で約21,000円です。
在宅医療の費用に関する特色は2つあります。1つは「在宅時医学総合管理料あるいは施設入居時等医学総合管理料」です。その方の生活を踏まえてどの治療を優先させるかといったお身体の全身管理をさせていただく費用です。病院と同様に医療保険の負担割合によって1割~3割で月に1回算定されます。
例えば、ご高齢の方は臓器の機能低下や、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病に伴う様々な病気の因子を持っている方が多いです。お一人の方が抱える病気が病院であれば複数の科にまたがっても、在宅医療であれば総合的に診療してもらえます。がんで闘病中に肺炎をきたしてしまった、がんが進行して他の合併症状も出てきてしまったという場合も対応可能です。
もう1つは介護サービスを利用されている方に請求される「居宅療養管理指導費」です。療養生活におけるアドバイスや、ケアマネジャーに書面で情報提供して医療者と介護者が連携するための費用です。こちらは医療保険ではなく、介護保険の負担割合1~3割で算定するのがポイントです。療養生活におけるアドバイスにおいては、褥瘡予防マットの選択、医療機器の使用方法や節電に関する話まで多岐に渡ります。また、ケアマネジャーとの連携では患者様に必要なリハビリテーションでしたり、ご家族のリフレッシュのためにショートステイをケアプランに入れてもらったりしています。
病院では集団生活ですから、起床や消灯、食事の時間などの予定や過ごし方は病院のルールに従うことになります。新型コロナウィルス発生後は集団感染の懸念から面会を制限せざるを得ないため、社会情勢の影響を受けやすいとも言えるでしょう。
コロナ後はご家族との時間を大切したいという希望で、在宅医療に移行する方が増えました。小さなお子様やお孫様、ペットなど面会制限を気にすることなく、一緒に過ごせるのも在宅医療のよいところです。家であれば音楽をかけたり、ゲームをしたり、治療にお差支えない範囲でお好きな食事を摂ったりするのも自由です。
療養場所の選択にあたって、何を取捨選択するかはその方次第です。医療を利用する目的によっても優先順位は変わってきます。治癒や回復なのか、経過観察や現状維持なのか、終末期で看取りも視野に入れているのか……。医療サービスの違いを知って、ご自分らしく生きられるように医療機関を使い分けることが可能になっています。