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2022.04.29
付き添いがないと病院に行けない、体調に波があって通院が難しくなってきた段階で検討し始めるのが訪問診療です。とはいっても、家に医師を呼ぶことに馴染みがない方は多いでしょう。どのように訪問診療クリニックを探せば良いでしょうか。実は診療所の正式名称や役割分担に応じた機能や分類などを知ることで受けられる医療サービスがわかります。
在宅で求められる医療機能は①退院支援、②日常の療養支援、③急変時の対応、④お看取りと考えられています(厚生労働省「在宅医療の充実に向けた取組について」平成30年)。
けれども、実際に全ての訪問診療クリニックで①~④の対応ができるかは、診療体制や特色によります。例えば、外来診療と訪問診療を行っている医療機関があったとします。訪問診療は外来の合間に行くのか、外来と同時に行えるマンパワーがあるのかによって、患者様の受入れ数や緊急時の機動力などにも影響するからです。こうした人員・運営体制で、家で最期まで過ごせるかが変わってきます。
では、どのようなポイントで訪問診療クリニックを探せば、ご本人やご家族が求める医療サービスを受けられるでしょうか。
2.緊急時の往診や入院先の確保、お看取りをしてくれるか
「もしもの時」には24時間365日体制で連絡が取れ、緊急時には訪問看護か医師が往診してくれたり、入院先を確保してくれたりする訪問診療クリニックが「在宅療養支援診療所(在支診)」です。
さらに、在支診としての役目を果たした実績があると「機能強化型在宅療養支援診療所」と名乗れます。過去1年間の往診(緊急時に臨時で訪問して診療すること)やお看取り(医師が患者様を家や施設で看取ること)、常勤医師の人数などから評価されます。
とはいうものの、在宅医療サービスを実施する一般診療所の施設数(図1、2)を見ると、24時間365日体制の在支診であっても往診やお看取りを実施しているとは限らないことがわかります。一方、在支診と謳ってはいないものの、往診やお看取りを実施している一般診療所があります。(厚生労働省「在宅医療の充実に向けた取組について」平成30年)。つまり、機能強化型として評価された在支診でない限り、緊急時の対応やお看取りまで実際にしてくれるかは判断しにくいということです。
3.緩和ケアで辛い症状を和らげてほしい
痛みや息苦しさなどの症状を和らげたいと思っている方は、緩和ケアに精通した医師を探すと良いでしょう。だからといって、緩和ケアに熟知している医師は、緩和ケア医や麻酔科医だけとは限りません。
一般の方が、緩和ケアが充実している診療所を探す指標として、その診療所を利用されている患者さまの内訳があります。がんの方を多く診ている診療所であれば、痛みのコントロールに対応しているということです。なぜなら、がんの痛みは診断時に20-50%、進行がん患者全体では70-80%の方が抱えているため、医療用麻薬を利用する頻度が高いからです(厚生労働省2017)。
さらに、「在宅緩和ケア充実診療所」と地方厚生局に認められている診療所であれば、医療用麻薬を使った緩和ケアの経験があり、実績が認められていることがわかります。緊急時やお看取りに対応してくれる「機能強化型」で、かつ緩和ケアに強い診療所「在宅緩和ケア充実診療所」であれば、医療サービスが充実している在支診だと言えます。
ところが、残念なことに診療所の正式名称からはこの機能・評価については伺い知ることができません。こうした医療機関の機能や分類に関わる話は、気になる訪問診療クリニックのホームページやパンフレットで、あるいは直接確認するしかありません。
4.全ての疾病に対応してもらえるか
訪問診療医に求められているのはお身体の全身管理を目的に、その方の生活を踏まえてどの治療を優先させるかを診断できる総合診療医(プライマリ・ケア医)の役割です。プライマリ・ケア志向の医者であれば、慢性疾患から重症度の高い方まで総合的に診療ができます。
身体だけではなく、患者様にまつわるさまざまな悩みから病にアプローチ(全人的ケアするため、時には、患者様を医療以外の部分で支えるために地域とのパイプ役になることもあります。
ただ、マンパワーの問題や経営方針などから全ての疾患に対応していない訪問診療クリニックもあります。治療できない病気はあるかを確認すると、そのクリニックの特徴がみえてきます。
5.子どもは診てもらえるか
プライマリ・ケア志向の訪問診療医であれば大抵の疾病は診られるのですが、15歳未満を対象とした小児科の診療についてはケースバイケースです。特殊な領域なので、現在の主治医との連携体制が取れれば実現しやすいです。東京・神奈川を診療エリアとする当クリニックでは0歳からの訪問診療が可能ですが、元々かかっていた主治医の方との連携は不可欠です。
なお、過去1年の実績に限定されますが、機能強化型の評価を受けた医療機関であれば、15歳未満の重症児を診たことがある可能性はあります。
6.訪問診療の頻度は月に1回か2回か
以前は月に最低2回訪問診療することが診療報酬制度で決まっていました。しかし、現在は、訪問診療の最低回数は月に1回からに変わっています。
その方に必要な医療行為が月に1回では足りなければ、訪問診療の回数を増やした方が良いです。けれども、不必要な訪問診療は患者さまやご家族の経済的な負担になるだけです。病気が回復すれば利用を止めたり、病気が進行した段階で訪問診療の回数を増やしたり、柔軟な対応をしてくれる訪問診療クリニックをお勧めします。
まとめ
1.緊急時やお看取りを確実にしてもらえる在宅医療機関は、機能強化型在宅療養支援診療所が良い
2.在支診でない診療所でも、緊急時の対応やお看取りをしてもらえるか、直接、問い合わせてみると良い
3.機能強化型で、かつ緩和ケアに強い診療所は「在宅緩和ケア充実診療所」である
4.全ての疾患に対応してもらえるのは、プライマリ・ケア志向の医師である
5.15歳未満のお子様の訪問診療の受入はケースバイケース
6.訪問診療の頻度は適正か