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在宅医療における疾患別の緩和ケア

2022.10.29

在宅医療における疾患別の緩和ケア

在宅医療でも病院と変わらない緩和ケアが受けられます。疾患別の予後を比較しながら、緩和ケアの概要をご紹介します。

(目次)

  1. がんの緩和ケア
  2. 心・肺疾患の緩和ケア
  3. 認知症・老衰等の緩和ケア
  4. 全ての方に共通する緩和ケア

1.がんの緩和ケア

治療のために通院と在宅医療を併用されている方もいますが、ここでは主にがんが進行してしまった場合に在宅医療で受ける緩和ケアについてお話します。

抗がん剤を中断された方へ

抗がん剤の治療は症状の緩和や生存期間の延長も期待できると言われていますが、治療しながらも進行してしまうがんもあります。あらゆる治療において効果が得られなくなった段階で、主治医から治療中止の提案があることがあります。治療を続けることで、これ以上正常な細胞も攻撃して体が衰弱するのを避けるためです。


治ることを期待した治療を止めることは辛い決断でもありますが、主治医の下、適切なタイミングで抗がん剤治療から緩和ケアに重点を置き始めると、回復したかと思われる程、一時身体が元気になると言われています。

確かなのは、緩和ケアは決して寿命を縮めるものではないということです。「早期から緩和ケアを取り入れたがん患者は終末期の治療を積極的に行った人が少なかったが、生存期間が長く、抑うつ症状も少なかった(Temel 2010)」という報告があるように、むしろ、積極的に取り入れた方が良いケアなのです。

がんの予後


個人差はあるものの医学的な見通しがつきやすいのが、がんの特徴です(下図1)。最後の数か月から数週間までは、比較的自立した生活が送れるため、出来る限りその方の思いを実現させることに主眼を置いています(「患者様の思いを主眼に置いた在宅医療」)。最期は病状の変化に対応できるように、こまめかつ迅速に対応することも心掛けていることの1つです。

図1_がんの予後

2.心・肺疾患の緩和ケア

息苦しさや胸の痛みがあって、生活が制限されやすいです。呼吸器系の疾患は息苦しさや心臓へ負担を軽くするために早くから在宅酸素を利用して、お部屋の空気よりも高い濃度の酸素を吸入していただきます。また、適度に訪問リハビリテーションを組み合わせて、全身状態が悪くなるスピードを遅くすることに主眼を置きます。
予後は下図2のように急に心肺機能が下がったり、回復したりを繰り返しながら、徐々に機能が低下して、最期は急低下する傾向があります。予後の見通しが付きにくいため、顔色がいつもと違う、足がいつもよりむくんでいるなど患者様の小さな変化が見受けられた時にはすぐに看護師や医師に連絡するようにしてもらいます。

図2 心肺疾患の予後

3.認知症・老衰等の緩和ケア

認知症には特効薬がないため、薬によって進行スピードを遅らせます。同時に、ご家族へのフォローも大事です。大切な方の認知機能が下がっていくという事実は受け入れ難いからです。しかし、忘れていくものは、記憶だけではありません。生理現象であるお腹が空くことも息をすることも忘れていきます。食べなければ衰弱していきますから、当然ご家族は食べさせたがります。そうしたときに、無理やり食べさせることが得策なのかといったことを、この先を見据えてご家族と一緒に考えます。ご本人もご家族もその方らしく穏やかな日々を過ごしていくための提案に主眼を置いて診療しています。また、認知症や老衰は下図3のように緩やかな下降線をたどっていくため、予後の見通しがつきにくいのが特徴です。長期間に及ぶ療養生活にご家族が負担を感じている場合もあるので、ご家族もケアできるように努めています。

図3_認知症・老衰等の予後

4.全ての方に共通する緩和ケア

全ての病に共通する緩和ケアは、全人的ケアであると言えます。全人的ケアは医療行為から意思決定支援、終末期に向けた話など広範囲に及びます。

身体、精神、心理的な問題を緩和する

何らかの辛い症状を訴えているようであれば、鎮痛剤か医療用麻薬などを使用した症状緩和やお体が少しでも楽になるような処置も行っています。このような緩和ケアは一見、体にしか働きかけていないようにみえますが、さまざまな問題を解決する糸口になります。

例えば、身体機能は低下していない段階でも、がんによる激しい痛みや倦怠感などがあると、起き上がって排泄や入浴、食事することもできなくなります。何も手がつかないと、自分が生きている価値はないとまで自分を追い詰めてしまうこともあります。がんの苦痛は体力も精神力も奪っていきます。傍らで支えるご家族も患者様と同じように不安になったり、悩んだりするはずです。

けれども、緩和ケアによってご本人の辛い症状が気にならない程度にまで治まれば、今までとほぼ変わらない生活を送れ、ご自分を取り戻すことができます。大切な方に笑顔が戻れば、ご家族も前向きな気持ちになれることでしょう。介護の負担もぐっと減るので、身体的な負担も軽くなるはずです。

病気の進行とともに身体機能も落ち、ベッドで過ごすことも多くなりますが、緩和ケアを通して心身ともに穏やかな終末期を過ごせるように支援します。

ご本人やご家族の意思決定を支援する

病気の進行と共に処置や治療の継続か、中止かの選択を何度か迫られることがあります。そのようなときに、医師が医学的に良い選択を押し付けることはありません。今の病状やこの先考えられる経過を踏まえたいくつかの選択肢を提示し、メリットやデメリットをお伝えします。そして、ご本人とご家族を尊重しながら「どう生きていきたいか」ということを一緒に考えていきます(シェアード・デシジョン・メイキング)。

確かに現実を受け入れて、医療に関する選択をしていくのはたやすいことではありません。しかし、現実と、ご本人やご家族の思いに乖離があると辛さが増していきます。そうなると、大事な選択を冷静にはできません。ですから、意思決定するために話す時間を持つことで、少しでも納得感が得られるように努めています。

もしもの時に備える

患者様がこの先たどる経過を予測して、予めご本人やご家族にこの先起こり得ることを説明したり、急変時の対応法などを伝えたりすることも全人的ケアの一つです。

フォロー体制は訪問看護師、訪問薬剤師などの医療職と、ケアマネジャーやヘルパーなどの介護職で密に連絡を取り合い、患者様とご家族を医療と生活の面から支えることで実現します。
楓の風では相談員も上記の支援に加わり、生活や仕事の悩みについては社会的な制度や取組、事例を紹介して相談に応じています。