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2022.08.18
たとえ、病気があっても、障がいがあっても、その方が自分らしい生活をするために納得いく治療やケアの選択ができるように医療の立場からサポートすることが楓の風の使命です。その人らしさを追求するのは、人生の質、生活の質ともいわれるQOL(クオリティー・オブ・ライフ)の向上につながると私たちは確信しているからです。患者様がご自分らしく生きるための支援として、私たちには2つのこだわりがあります。
現在の医療は、医師が提示する治療方針に対して、患者様が同意するorしないというインフォームドコンセント(IC)といった考え方が一般的です。医学的な見解では、医師は正しい選択を示しているのかもしれません。けれども、ICですと医師が主導で患者様やご家族が従うといった上下関係が生じる傾向があります。また、その選択が必ずしも患者様が求めている生き方とは限りません。
そのような訳で、楓の風は「シェアード・デシジョン・メイキング(SDM)」という考え方を大切にしています。患者様が医療ケアや治療の選択を意志決定するための知識・情報共有が直訳となります。主治医としての医学的見解は伝えるものの、患者様の思いや価値観、ご事情などをくみ取るための話し合いの末、治療方針を決めます。欧米では主流な考え方ですが、私たちは、この考え方をあらゆる病気の方において実現したいと考えています。なぜなら、私たちは医療を通して、自分たちの価値基準を患者様に押し付けてはならないからです。
例えば、飲めば改善するけれども、副作用として手足の震えが出る薬の服用は、職人や演奏家の方々にとっては死活問題です。従って、効き目は緩やかだとしても副作用が仕事の支障にならない薬を提案します。この方の場合は、病と上手に付き合いながら生きていくことがベターな選択というわけです。このように、患者様の思いを共有した上で、医療を提案することを重要視しています。
SDMを通して、患者様の思いを知ると、その方の療養生活に関わるご家族や、医療・介護関係者等で思いを共有します。この思いの実現のために、私たちが大切にしている患者様との関係性があります。 よくある関係は、円の中心にいる患者様に周りから医師や看護師たちが働きかける構図です。この場合、患者様は受け身になりやすく、周囲の人間が患者様を守る態勢になります。この態勢を避けるために、楓の風では下図のように患者様の思いを中心として、患者様と医療者たちがフラットな関係を築けるように心掛けています。
その方の思いを実現するために、あらゆる関係者が患者様の思いに働きかけます。ご自身も主体的に自分の思いを実現していただきます。こうした全員の関係性を楓の風では「共創関係」と呼んでいます。 自分の人生を生きるのは、他の誰でもない自分自身です。患者様が医療者から必要な知識や情報を得て、ご自分らしさが叶う治療やケアを取捨選択していくのがより良いと、私たちは考えています。医療者の考えを押し付けたり、誘導したりすることのないようにしています。そのために、まず訪問診療の初回にこう伺います。「お家で何がしたいですか?」「どのように過ごしていきたいですか?」。