お電話でのお問い合わせ
各クリニックへのお問い合わせはこちら
2022.06.24
ケアマネジャーより私たち訪問診療クリニックに紹介されたのは、複数の疾患を抱え、7つの医療機関に通っていた80代の女性(要介護1)。よくよく伺うと、長年通っていたかかりつけ医への恩義を感じながらも体力的、経済的な負担が限界にきていることがわかりました。そこでまずは訪問診療は総合的にお身体を管理できることをご説明をしました(前回までのお話)。後半では総合的にお身体を管理するメリットを薬の管理、医療費という視点でお伝えします。
さらに、許可を得た上で薬手帳を確認したところ、内服薬だけでも全部で10種類超。しかも、ご本人たちは何の薬かもよくわかっていないご様子でした。また、利用している薬局もバラバラでシールの日付も前後していたりするため、薬の管理や服薬状況の確認も必要と思われ、不適切な服薬による体調悪化が懸念されました。全体の投薬状況を管理し、QOLと医学的な必要性との間で整理していくことも訪問医の重要な業務となります。
また、体力的な負担とは別に、経済的な不安を抱えているとの申し出がありました。医療費よりも交通費(タクシー代)の方が厳しいとのことでした。医学総合管理は1割負担の方で3,000円(月1回の診察)~5,000円(月2回以上の診察)くらいの費用がかかります。医療費の中では高額にあたりますが、往復のタクシー代を考えると問題にならないとのことでした。
支援者側からみれば訪問診療に一本化することのメリットは多いように感じましました。ただ、一この日初めてお会いした私にもとても丁寧に対応されるほどの誠実なご夫婦であり、長年通院されている先生方への配慮の念と義理堅さは容易に窺い知れました。そのため訪問診療にメリットを感じるのであれば、次回の受診時に担当の先生と相談されることをお勧めしました。その際に、そのような相談を行うことは決して失礼にはあたらないこと、むしろ最近は国の方針で各医療機関の機能が細分化されており、病状に応じて患者様に合った医療機関を選定することは外来の先生方にも浸透していることを申し添えました。
後日、担当ケアマネジャーから一括して当院の訪問診療に移行することをご本人・ご家族が希望されたとの連絡をいただきました。体力的にも経済的にも限界にきていたとのことでした。正式な依頼になったため、医師の初回訪問にむけて具体的な準備を開始しました。過去の複数の医療機関への受診状況や受診の経緯を整理し、訪問診療の依頼にいたる経緯を担当する医師に報告することは総合医療相談員としての重要な業務の1つです。この報告が無いと初回訪問で医師が一つ一つ経緯を確認しなければいけなくなり、今後の療養方針の相談になかなか辿りつくことができなくなります。この方の場合、初回訪問でスムーズに関係を築くことができ、さっそく服薬体制と服薬内容を見直すことになりました。整形外科に行っていた日もデイサービスに行くことになり、家族も受診の付き添いが無くなって生活が少し落ち着かれました。