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2022.12.09
楓の風の1年で最も訪問診療のご依頼が多くなるのが、お盆と年末です。また、通年を通して記念日をご自宅で祝いたいと退院を希望される方もいらっしゃいます。
1.行ってらっしゃい、お帰りなさいの場所
「主人にとって帰りたい場所が家だとわかり、本当に嬉しかったです。『お帰りなさい』と言えて良かったです」と私たちに吐露されたのは、末期がんだったMさん(男性・50代)の奥さまです。 Mさんは「今回が家族で祝える最後の記念日になるだろうから」と、急きょ、退院を希望され、楓の風に訪問診療を依頼されました。訪問診療を相談当日に受けられたことにほっとされていました。
お仕事柄、家でゆっくり過ごすことはあまりなかったMさん。そのMさんが最期に選んだ場所が家であることは、奥さまにとってこの上ない喜びとなりました。ご家族がそろう時間が少なかったからこそ、いつもみんなが気持ちよく過ごせる場所にしようと家事に育児にと勤しまれてきたからです。成人されたご子息やご子女も集まり、Mさんをご自宅に迎えられました。
医師よりも一足先に駆けつけた相談員が診療までの待ち時間に、ご家族の前で患者様とこんな会話のやり取りをしたそうです。「これまでのお仕事で一番印象に残っていることは何ですか?」。すると、目をキラキラさせながらMさんは話し始めたそうです。
2.親の生き様を見せる場、最後の親孝行の場
ご家族がMさんの仕事の話をじっくりと聞かれたのは、この時が初めてということでした。途中、何度が嘔気に見舞われながらも、最後まで話すのを止めなかったと言います。そんなMさんの姿はご家族にどのように映ったでしょうか。ご自分たちのペースでこうした時間を持てるのは在宅医療ならではです。
在宅医療は親の生き様を子に見せる場であると同時に、子が親に最後の親孝行をする場でもあります。 ご子息やご子女がMさんの想いを汲んで、家族みんなで記念日を過ごすためにMさんを家に迎え入れられた。これだけでも十分親孝行だと私たちは考えています。
ご本人が帰りたいと言っていても、受け皿がないと思いが叶わずに終わってしまうことがあります。ご家族が「そんな病状で帰れるはずがない」「何かがあっても対応できない」と反対されるからです。
私たちはあらゆる提案をし、医療面でもサポートしますが、最終的に必要なのはご本人が家で過ごしたいというお気持ちと、そのお気持ちをご家族が尊重できるかに尽きます。 「人は生きてきたようにしか死ねない」というのは、私たち自身も訪問診療を通して感じていることです。Mさんのご家族も一緒に過ごした時間こそ少なかったかもしれませんが、皆心で繋がっていました。Mさんがご自宅に戻られたことで、ご家族全員がそう実感できる時間となったことと思います。
楓の風では一人でも多くの患者様が住み慣れた場所で有意義に過ごしていただけるように医療でサポート致します。どうぞお気軽にご相談ください。