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2022.10.10
町田市、横浜市、川崎市、大和市などを診療エリアとする楓の風は、CART療法(腹水ろ過濃縮再静注法)を行う数少ない訪問診療クリニックのひとつです。患者様やご家族ご自身で様々な医療情報を収集し、お腹が張っていて苦しいのでCART療法をお願いしたいとご要望を受けることがあります。CART療法のことを通じて私たちの治療に対する考え方も交えてお伝えします。
CART療法(腹水ろ過濃縮再静注法)は、腹水の増加による息苦しさや不快な症状を緩和する治療です。
私たちのお腹にある臓器は腹膜に包まれ、適量の腹水によってお腹の中の臓器同士が摩擦を生じにくくなっています。ところが、がんや肝硬変などの影響で腹水が増えると、息苦しくて動けなくなったり、食欲が落ちたりします。では、ただ腹水を抜けば良いかというと、そうではありません。腹水には細菌やがん細胞といった身体に不要なものだけでなく、アルブミンやグロブリンという体に必要なたんぱく質も入っています。そこで、CART療法によって適量の腹水を抜き、不要な細菌やがん細胞、血球成分を取り除き、有益な成分だけ点滴で戻します。
施術時には部分麻酔を使用し、超音波を使い、お腹の壁と臓器の間に腹水が十分にあって安全な状況であると確認できた上で実施します。
CART療法はもともと自分の身体にあった必要不可欠なたんぱく成分を再び活用することができるというメリットがあります。また、息苦しさやお腹の張りからくる痛みなどから解放されるため、動けるようになったり、食事ができるようになったりするのも利点です。
全ての治療に言えることですが、万能な治療はありません。CART療法も同様に副作用や部分麻酔の使用、身体への負担などのデメリットもあります。
私たち医師の役目は患者様に負担が一番少なく、適切な治療法を選択することだと考えています。最終的には患者様の治療はお身体全体を総合的に判断し、適否を担当医が判断致します。その際には診断内容をわかりやすく説明し、最終的に患者様やご家族がご納得いただける治療を選択できるように努めます。