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2022.09.19
病気やケガで命の危険が迫った状況において約7割の方が自分で医療やケアの選択ができなくなると言われています。一方、「もしものとき」の治療やケアについて話し合っていた方は、いざ、その時が来ると、望んでいた医療処置が受けられ、ご本人やご家族の満足度も高いという調査結果が出ています。楓の風でご本人とご家族が納得のいく最期を迎えられた90代の男性のケースをご紹介します。
Eさん(90代・男性)は、通院が難しくなった段階で訪問診療に切り替えて自宅療養されていました。しかし、その訪問診療所は24時間体制で往診(臨時の診療で緊急対応をすること)に来てくれるクリニックではなかったため、今後の体調変化に備えられたいと楓の風に転医されてきました。
実は訪問診療を行っているクリニックや病院は診療体制によって類別されています。主に次の施設基準が満たされると、在宅療養支援診療所(在支診)、あるいは在宅療養支援病院(在支病)として認められます。
《在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院施設基準》
上記に加えて、過去1年間の往診や在宅看取り実績などが該当すると、機能強化型の在支診・在支病とみなされます。さらに、高度な緩和ケアを提供し、スキルと実績が認められると、在宅緩和ケア充実診療所・病院として評価されます。
従って、何を目的に訪問診療を利用するかによって、依頼先を検討する必要があります。
Eさんが訪問診療を利用されたきっかけは通院が困難になったためでしたが、最終的な人生の目標は入院せず最期までご自宅で自律した療養生活を送ることでした。そのために、訪問診療の他に、訪問歯科と訪問リハビリテーションを利用されて、口腔内の衛生管理や身体機能維持に努められていました。
楓の風に転医された時には既に食事が取れない状態でしたが、胃ろうは造設しないと、Eさんはご家族での話合い(人生会議、ACP)も済まされていました。結果的に、最期まで口から味わって食事を楽しむことができ、ご本人やご家族の意志が貫徹されました。持病は高血圧、高脂血症、認知症など死に直結する疾患がなかったEさんでしたが、転医から数日後に老衰でご逝去されました。ご家族の機転により、Eさんは最期までご自宅で過ごすことができたのです。
老衰はがん(全死亡者に対する割合26.5%)、心疾患(同14.9%)に次ぐ、日本人の死因第3位です(厚生労働省「令和3年人口動態調査」)。平成30年に脳血管疾患に代わって以来の順位で、令和3年の全死亡者に占める割合は 10.6%となっています。
もしものときのための話合い、かかりつけ医の再検討をしておくことも将来の備えになります。
(この記事は事実を元に再編集しています。)