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高齢者が抱えやすい「ポリファーマシー」問題と対策

2022.08.29

高齢者が抱えやすい「ポリファーマシー」問題と対策

超高齢社会において在宅医療は終末期医療として取り上げられることが多いですが、別の側面もあります。総合診療によって受診の負担を軽減し、体調の維持・改善にも貢献しています。この背景には高齢者が抱えやすい「ポリファーマシー」問題があります。「ポリファーマシー」に凝縮された問題を紐解くことで在宅医療の意義についてお伝えします。

(目次)

  1. 超高齢社会の問題のひとつ「ポリファーマシー」とは?
  2. ポリファーマシーを防ぐ方法
  3. 生活習慣病や複数の病を抱える方にすすめる総合診療の受診
  4. あらゆるニーズに応える在宅医療
  5. 家で総合診療する在宅医療の利点

1.超高齢社会の問題のひとつ「ポリファーマシー」とは?

複数の薬を飲むことで心身に異常をきたすポリファーマシー。めまいや転倒、食欲不振、ひどいと寝たきりや死に至ることもあります。多剤併用によって必要以上の服用、薬の飲み合わせによって起こります。

ポリファーマシーの問題を取り上げると「医師が薬を処方し過ぎるからだ。医師が稼ぐために薬を処方しているのではないか」といった意見が出ることがあるのですが、答えはNoです。

超高齢社会でポリファーマシーのリスクが高まりやすい理由は2つあります。複数の病に対して複数の科や医療機関で別々に処方される方が多いから。もう一つは長年同じ薬を同量で飲み続けている方が多いからです。人は年齢と共に臓器の働きが減退し、薬の消化・吸収力も低下していきます。ですから、薬の種類や量は効き具合や副作用に応じて、随時調整する必要があるのです。

2.ポリファーマシーを防ぐ方法

実はこうしたポリファーマシー対策として、国は診療報酬改定によって医療従事者へ意識付けています。2016年の改定により6種類以上の内服薬から2種類減薬をした場合に加算が取れるようになりました。

ポリファーマシーの予防は医療者だけに頼るのではなく、私たち自身も気を付けることはできます。例えば、医療機関を受診する際にはお薬手帳を必ず持参して、医師に確認してもらう。また、薬局はかかりつけを決め(かかりつけ薬剤師に)、薬の飲み合わせに注意してもらうなどです。 そして、一番良いのは、今ある症状に対して薬で治療するだけでなく、服用している薬の調整や薬物療法以外の選択肢も踏まえた治療の提案をしてくれる医師に出会うことでしょう。

3、生活習慣病や複数の病を抱える方にすすめる総合診療の受診

そこでご紹介したいのが、全身管理を目的とした総合診療(プライマリ・ケア)という分野です。複数の科にまたがる病気を総合的に診療してくれます。原因不明の不調を訴える方やどこの科を受診すれば良いかわからない方も対象になります。総合診療では身体そのものだけでなく、その方を取り巻く社会・家庭・経済環境などから総合的に判断します。従って、専門医と連携することはもちろん、地域や行政との橋渡し役になることもあります。

こうした総合診療を専門とする新しい専門医制度は2018年度から始まりました。今では総合診療科を標榜する病院は増えてきたので見聞きしたことがある方が多いかもしれません。

4.あらゆるニーズに応える在宅医療

ご存じの通り、在宅医療では昔から総合診療としてあらゆる病気に対応してきました。在宅医療も含めて総合診療が見直された背景には超高齢社会、多様な社会に対応するためだと考えられます。

近代化以降、最先端の治療が推し進められてきたために医師の専門はより狭く、より深い知識と技術が求められてきました。もちろん、最先端の治療は必要です。けれども、超高齢社会、多様な社会に必要な医療は必ずしも完治や正常値に戻す治療ではありません。複数の疾病を総合的に診て一人ひとりの生活スタイルや嗜好に合った医療の提案も必要です。

在宅医療では副作用がいやで服用したりしなかったりする場合は、逆に身体に負担をかけてしまうので服用せずに経過観察をしている方もいらっしゃいます。また、服用は避けられない場合でもリハビリテーションを利用することで副作用を改善している方もいらっしゃいます。

5.家で総合診療する在宅医療の利点

こうした超高齢社会における多様なニーズに応える在宅医療の利点は、①全ての処方を把握できること、②服薬状況を目視確認できることです。①についてはポリファーマシーの可能性も含めて、身体への影響を総合的に判断します。②の状況次第では治療方針が変わるので、生活習慣も踏まえて提案します。

在宅医療の強みを発揮した実例1》

これまでの患者さん(90代・女性)で、寝たきりで食事も取れないのは加齢のためで仕方ないとご家族が思い込まれていた方がいらっしゃいました。しかし、診療の結果、薬が効き過ぎであること、また、不足する栄養素があることがわかりました。そこで、減薬と栄養素の補填をしたところ、1ヶ月後には起き上がって食事を取れるようになり、血色も良くなりました。その方は自分で排泄もできるようになったのです。

在宅医療の強みを発揮した実例2

また、ある方(50代・女性)は糖尿病に起因する様々な症状が出ていました。ところが、初診で訪問した際に、大量の残薬を医師は目にしました。聞けば、ご家族の介護も重なり自分のことはおざなりだったとのことでした。そこで、医師が生活スタイルに合った服用の回数やタイミングを伺うことで、その方が服用を継続できる薬を提案。血糖値は大幅に改善しました。

このように在宅医療ではお一人おひとりが抱えている様々な背景を見つけ、治療につなげています。複数の病気を抱えながらも、ワンストップで、かつ住み慣れた場所で受診ができる訪問診療。ご本人やご家族の受診の負担を軽減しつつ、さらに、体調が整えばこれ程良いことはないでしょう。