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訪問医療における意思決定支援 〜食事が摂れなくなったとき〜

2022.08.10

訪問医療における意思決定支援 〜食事が摂れなくなったとき〜

食事が摂れなくなった時に胃瘻などの人工的なやり方で栄養の摂取をおこなうかどうか? 訪問診療においても患者様が自宅療養を続けていく中で、ご本人やご家族が大きな決断に迫られることがあります。近年ACP=Advance-Care-Planning≒人生会議が推奨されており、仮に常日頃から「どう生きたいか」について話し合っていたとしても、”その時”が来たら改めて話し合う必要があります。

2012年に日本老年医学会が『高齢者ケアの意思決定プロセスに関するガイドライン~人工的水分・栄養補給の導入を中心として』を策定しました。今回はこのガイドラインを意思決定のあり方のエッセンスが詰まっているので取り上げます。

ガイドラインの構造としては、3部構成になっています。

①医療・介護の意思決定プロセス

②いのちについてどう考えるか

③ AHN(人工的水分・栄養補給)導入に関する意思決定プロセスをめぐる留意点

このうち,①と②は医療・介護全般にわたる一般的な指針であり,それを高齢者ケアにおけるAHN問題に適用したものが③という構造になっています。

➀ 医療・介護の意思決定プロセス

考え方の特徴としては、本人・家族だけではなく、関わる医療・介護関係者も含めて「みんなで決める」ということです。従来、医師(医療者)は取り得る選択肢を提示して、「さあどうしますか?」というスタンスになりがちだった。そうではなく、本人にとってどのあり方が一番良いかを一緒になって考える、ということです。

また、本人の決定が絶対的ではないことにも触れています。ご家族は本人の決定に盲目的に従わなければならない訳ではなく「共に生活する当事者」として話し合いに参加します。本人だけが決めるのでも、家族だけが決めるのでもなく、医療・介護者も含めた「みんなで決める」ことが推奨されているのです。

② いのちについてどう考えるか

基本的な考え方は、「本人の人生をより豊かにしうる限り,生命はより長く続いたほうが良い」としています。医療処置を考えるにあたり、「本人の人生をより豊かにし得るのか?」が焦点になってくるということです。言い換えれば、単に生命が伸びることを医療処置の判断基準にはしないということ。それによって延びた人生が「良い」と評価されるかどうかによって,選択するかどうかが分かれます。

③  AHN(人工的水分・栄養補給)導入に関する意思決定プロセスをめぐる留意点

➀と②に則って話し合えば、AHN(人工的水分・栄養補給)を導入するかどうかの結論は導かれる構造になっています。その際の留意点として③では、(ACPと同様に)プロセスの「見直し」が可能である点や、現実的には最善は選べないかもしれないが、次善を見極める努力をすることなどに触れています。

このガイドラインでは、胃瘻や経鼻経管栄養、点滴や中心静脈栄養がどのような処置で、どのような長所と短所があるのか、については触れていません。(参考:公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット

ガイドラインは読めば読むほど難しく感じてしまいますが、楓の風の総合医療相談員(※)として実際に関わらせていただく場合には、話し合いの場で錯綜する本人や家族、関係者の思いを上手く昇華できるよう努めたいと思っています。ご不安なこと、お迷いのことがございましたら、相談員が在籍していることが楓の風の特徴でもありますので、遠慮なくご相談ください。

※総合医療相談員は患者様、ご家族が安心して訪問診療をご利用できるように医療や福祉の相談に乗ったり、病院や施設、関係事業所との調整をしたりします。訪問診療クリニックによって呼称が異なったり、事務員が役割を担ったりします。

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