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在宅医療のメリットは「家の力」

2022.06.28

在宅医療のメリットは「家の力」

誰にでも大きな病気にかかり、意思や判断能力が落ちてしまう時がくるかもしれません。もしもの時に、ご自分の考えを共有されている方がいると、最期まで納得できる人生を送ることができるでしょう。実際の訪問診療でご家族が選択された終末期医療の一例をご紹介します。

E(80代・女性)さんが長年付き合ってきた糖尿病が引き金となり、人工透析を開始したのは15年程前のことです。それから10年後、脳梗塞に見舞われました。一命は取り留めたものの、脳梗塞によって失語症となり「話す」「聴く」「書く」「読む」という言語機能が失われました。また、食べ物を飲み込む力(嚥下機能)が衰えたので、経鼻経管栄養法に頼る栄養補給と、寝たきりの生活を余儀なくされたのです。

今後は、Eさんの体力の低下と、ご家族の介護量の増加が予測されました。また、動脈と静脈をつないでスムーズに血液透析するためのシャントが劣化して、詰まらないかという問題も懸念されました。このような状況下で病院から迫られた選択は三者択一。1つ目は療養型病院で透析と介護を受けながら過ごす。この場合、予後1年。2つ目は、透析を中止して、自宅で療養する。この場合、予後1週間。3つ目は可能な範囲で通院して透析しながら、在宅医療を利用して自宅で療養する。この場合、予後は週単位~月単位。

「いつかはこういう日が来ると思っていたんですけどね。入院しても長く生きられないのであれば、家に連れて帰ってあげたいと思います」。突然、コミュニケーションが取れなくなった奥さまの代弁者として、ご主人は通院と在宅医療を組み合わせた自宅での療養生活を選ばれました。

Eさんが入院先からご自宅に戻ってくると、部屋をぐるっと見回して、笑顔になられたそうです。「家に帰ってきたって、わかったんですね。病院では険しい表情をしていたんですよ。本当に良かったと思います」とご主人はおっしゃいました。自宅に帰ってからのEさんは穏やかな表情をされるようになったそうです。

Eさんはご自分の希望を医療者に伝えることはできませんでした。けれども、もし意思疎通が図れたなら、きっと家に帰りたいと言うはずだ。ご主人は確信されて奥さまの終末期を選択されたことと思います。それでも大切な方との別れが近づいていると思うと、揺れるお気持ちもあったことでしょう。奥さまの笑顔が見られたことでご主人は随分と救われたに違いありません。


(この記事は事実を元に再編集しています。)