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在宅医療が不安な理由7つとは

2022.07.06

在宅医療が不安な理由7つとは

かつての日本人の8割以上の方々が家で看取られていたように、時代が変わった今、住み慣れた場所で最期まで過ごすのは難しいのでしょうか。最期まで家で過ごしたいと思いながら、最終的には7割以上の人が病院を選ぶ7つの理由をお伝えします。

目次

  1. 病院が安心という信仰
  2. 家での看取り条件に当てはまらない
  3. 家族の介護力がない
  4. 急変時の対応や入院先の確保が心配
  5. 療養生活が可能な生活環境ではない
  6. 病院より経済的な負担が大きい
  7. 家に帰れる病状ではない

1、病院が安心という信仰

厚生労働省が実施した平成29年度人生の最終段階における医療に関する意識調査結果によると、末期がんでも自宅で過ごしたいと考えている一般国民は47.4%、医療・介護従事者は6割以上の方が自宅での看取りを希望しています。しかしながら、実際に家で亡くなられた方は1割程度しかいません。7割以上の方が病院で亡くなられています。(厚生労働省「人口動態統計」2017)

希望と現実のギャップは何が原因でしょうか。先の厚生労働省の調査結果によると、末期がんで最期に過ごしたい場所を医療機関や介護施設を挙げた第一の理由は「介護してくれる家族に負担がかかる」です。「症状が急変したときの対応に不安がある」「症状が急に悪くなったときにすぐに入院できるか不安」と続きます。入院中は全てを任せられる病院という後ろ盾がなくなったときの不安感が、調査結果に表れています。

けれども、病院を頼るのは無理もありません。1950年には8割以上だった家での看取りが半世紀で1割まで減少し、医療の発展とともに病院で終末期を過ごすことが主流になったからです。

2、家での看取り条件に当てはまらない

在宅医療に興味がある方はネットや医療機関、行政などで情報を収集されているかもしれません。医療や介護の専門家・専門機関が家での看取り条件を次のように掲げていることがあります。

  1. ご本人・ご家族が自宅療養を希望している
  2. 訪問診療や訪問看護などの必要な医療やケアが受けられる
  3. 在宅療養が可能な病状と生活環境である
  4. 家族や介護サービスによる十分な介護力がある

これらの条件が整わないと、本当に在宅医療を利用するのは難しいのでしょうか。お住まいの地域によっては在宅医療の社会資源や人的資源が不十分かもしれません。とはいえ、私たちが経験上言えるのは、全ての条件が絶対ではないということです。絶対なのはご本人とご家族のお気持ちです。ただ、介護力、在宅療養が可能な病状と生活環境に関してはケースバイケースだと考えています。家での看取り条件を言い切れる程、単純なものではないのです。それは、お一人おひとり療養生活で大事にされたいこと、希望を叶えるための医療が違うからです。ですから、家で療養されたい方は、お近くの訪問診療所、病院の相談室、お住まいの包括支援センターなどで話を聞いてみても良いでしょう。

3、家族の介護力がない

私たちがお伝えできるのは、「病気」=「必ず家族の介護が必要」ではないということです。なぜなら、私たちのクリニックには、最期までお1人暮らしを全うされた方々がいらっしゃるからです。

日本人の死因第1位であるがん患者を例にすると、最期の数週間~数日まで自立した生活を送れることが多いです。身体機能が落ちてきた段階から訪問診療・看護、訪問介護の回数を徐々に増やして、サポート体制を強化していきます。ときには、行政や地域住民の方々に協力いただくこともあります。

今後、更に超高齢社会が進み、生涯未婚者や離婚者の数も増加傾向にあるため、一人世帯が増えることが予想されます。厚生労働省が2025年を目標に地域包括ケアシステムの構築を行っていますが、あらゆる人が住み慣れた家で最期まで暮らせる社会を国も目指しています。

4.急変時の対応や入院先の確保が心配

手術や延命治療を希望されない場合は、病院にいてもご自宅にいても急変時の医療的な対応は同じです。急変時の対応が不安になるのは、経験されたことがないからではないでしょうか。そのため、私たちは病気の進行によって起こりうる合併症や症状をご本人やご家族にお伝えしていきます。痛みが急に強くなったり、呼吸が苦しくなったりなどしたときの対処法を合わせて知ることで、心構えができる方が多いです。

それでも、急に電話で相談したい時や診てもらいたい時もあるでしょう。緊急時の対応はナースコールの早さにはかないませんが、私たちのように24時間連絡がつく在宅療養支援診療所であれば電話や往診で対応しています。また、急変時に病院での対応を希望される場合は搬送先を探すお手伝いもしています。

5.療養生活が可能な生活環境ではない

ご自宅での療養生活は必要なお薬や医療器具さえそろえば、100%完璧な状態からでなくでもスタートできます。生活環境はあとから整えられます。

私たちの場合、訪問診療を利用されたいと相談を受けてから最短で当日、ご自宅に伺っています。その場合、患者様の病状に合わせて最低限の医療器具のみ病院から持ち帰ります。福祉用具貸与事業所によっては、介護ベッドや車いすのレンタルも当日の手配が可能です。

となると、生活環境より大切にしたいのは訪問診療を取り入れるタイミングではないでしょうか。入院したくないあるいは家に帰りたいと思ったタイミング、この日を逃したらもう家に帰れないかもしれないというタイミングが、その方が在宅医療に移行するベストなタイミングだと思います。

6.病院より経済的な負担が大きい

算定の方法は、全国一律です。在宅医療にかかる費用は通院よりも高く、入院するより安くなるのが一般的です。月2回の訪問診療で基本的なご利用料金は、医療保険1割負担の方が約7,000円、3割負担の方で約21,000円です。この他に在宅酸素療法や点滴などの処方や検査があると加算されていきます。また、交通費や診断書などは自費負担になり、訪問診療クリニックによって異なります。

従来の算定方法の名残りから、病状の程度に関わらず月2回の訪問診療を原則としているクリニックもあります。当クリニックでは症状が安定している方は月1回からの訪問診療が可能です。過度な診療や治療を希望されない方は月1回から診てくれる訪問診療クリニックを探すと良いでしょう。

7.家に帰れる病状ではない

本心は「家に帰りたい」「退院させてあげたい」と思いながら、患者様やご家族、医療者が「こんな状態で家に帰れるはずがない」と思い込んでいるケースです。

患者様やご家族はどの程度の病状から在宅医療での受け入れが可能か、判断がつきにくいかと思います。医師も患者様を受け入れているからには責任を持ちたいと考えているため、退院についてYESと言いにくいときもあるかもしれません。しかし、本来、どこで医療を受けながら生きるかの選択は、その方の自由なはずです。

最近でこそ研修医が在宅医療で臨床研修することになっていますが、医師の専門領域は分化が進んで狭く深くなっています。在宅医療ではどのような治療が可能か、どの段階で病院からの受入れが可能か等の知識や経験は、医師によってまちまちです。訪問診療クリニックによっても処置や治療範囲が多少異なるので、医師が全てを把握するのは難しいでしょう。

当クリニックで受入れ可能な在宅輸血やCART療法なども「在宅医療でできるのですか!」と医療関係者に驚かれることがあります。在宅医療では、恐らくみなさんが思っているより多くの対応が可能になっています。

在宅医療に二の足を踏む理由は人それぞれです。ただ、私たちから助言できるとすれば、ご本人がお家で過ごしたいと希望されているのであれば、試しに1週間だけ在宅医療を利用してみてはいかがでしょうかということです。

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