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在宅医療におけるコロナ渦での最期の選択

2022.06.12

在宅医療におけるコロナ渦での最期の選択

コロナ渦において、大切な方と十分に会えないまま、病院で亡くなられたという報道をよく耳にします。そのような中、在宅医療では家族との時間を大事にしたいと退院されてくる方も多いです。療養の場が家ということもあり面会の制限こそないものの、患者様ご本人の強いご希望によってご子息と会わずに逝かれた方もいらっしゃいました。

末期がんのJさん(60代・女性)は、最期はご自宅に帰りたいと、病院から退院されました。家に帰ることができたという安堵感に満ちて「このまま穏やかに家で過ごしたい」と笑みを浮かべられていました。家にJさんを迎え入れたご主人も大病後ではあったものの、最期は奥様のご希望を叶えるべく、出来る限りのことはしたいと口添えされていました。遠方から駆け付けていたお嬢様は療養環境が整えられたのを見届けて、安心して帰途に就かれました。

それから、10日程経ったでしょうか。Jさんはご主人に見守られながら、静かに旅立たれました。そして、ご主人はこう私たちに話されたのです。「遺骨になるまで、娘には黙っていてほしい。妻たっての希望なんです」と。帰省の途中で、持病のあるお嬢様が新型コロナウィルスに感染しないようにするためという計らいでした。「娘を守りたい」という親心は重々理解できます。けれども、私たちも人間です。「本当にこのままお嬢様にお伝えしなくて良いのだろうか」という思いが何度もよぎりました。

最期までご本人の思いを尊重するということは、時には私たちの感情と葛藤することもあります。しかし、私たちは静かにその方の思いを受け止め、その方の人生が全うされるようにサポートすることが大事です。

お嬢様におかれましては、最期まで自分を守り抜いてくれたというご両親の生き様が、この先の人生を強く歩まれる力となりますよう祈るばかりです。

(この記事は事実を元に再編集しています。)