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がん患者からの相談で訪問診療医が考える緩和ケアの問題点

2022.05.11

がん患者からの相談で訪問診療医が考える緩和ケアの問題点

ゴールデンウィークも過ぎ、初夏の様子も少しずつ見られるようになってきました。皆様はどのような連休でしたでしょうか? 在宅医も順番に休暇を頂き、連休後の診療を開始しています。

最近、訪問診療のご相談をいただく中で「治療を行う段階ではないので病院から緩和ケアを勧められた」とお話になる方が徐々に増えてきたな、という印象があります。今までは病院で治療という具体的な目的を目指して進んできたが、今度は「これからどんな日常を送っていきたいか」といういわば抽象的な目標を立てるために意識を切り替えなければならないために非常に混乱する、もしくは目標を立てられないといった声も聞きます。


では、緩和ケアについて、もっと早い時期から考えた方が良いのでしょうか。まさにその通りです。治療と緩和ケアは反対の考え方ではなく、両立することが可能です。

2002年にWHO(世界保健機構)はNational Cancer Control Programmes第2版を発表しました。1991年に発表された第1版との変更点は「緩和ケア」の定義変更、「包括的がん医療」モデルの提唱です。「包括的がん医療」とは、予防、診断、治療、緩和ケアを一連の流れとして切れ目のない医療サービスを提供することと、治療の早い時期から緩和ケアを患者さん、ご家族に提供することでがん医療の質を変化させることです。


また、国内では2007年に「がん対策基本法」が施行され、同年に「がん対策推進基本計画」が作成されました。これらは日本のどこに住んでいても質の高い同水準のがん治療が受けられるように、また、抗がん剤編重の医療から抗がん剤治療に緩和ケアを組み入れた包括的がん治療を目指すということが基本的な考え方になっています。

ですから、緩和ケアはがんと診断された時から行われるものであり、治療が終了した時に考え始めるものではありません。がん対策基本法が施行されてから15年経過しますが、市民生活の中にまだまだ十分に浸透しているとは言えない状況です。緩和ケアはまだ特別な医療と考える方も多いですが、かならず緩和ケアが普通に行われる時代が来ると私たちは信じています。

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