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訪問診療の初診で末期がん患者の本音を知った私たちの行動とは

2022.05.14

訪問診療の初診で末期がん患者の本音を知った私たちの行動とは

在宅医療で一番優先されるのは患者様のお気持ちです。この先、どのように過ごしていきたいか。その思いを軸に、患者様の家での療養をサポートする医師や訪問看護師、総合医療相談員(※)、ケアマネジャー等が在宅医療チームとなって考えます。末期がんで病院から楓の風に紹介された Bさん(70代・女性)の場合は、お気持ちを尊重するために別の訪問診療クリニックへとバトンタッチすることとなりました。

病院から家に帰りたいと横浜市の自宅に戻られたB(70代・女性)さん。初めての訪問診療で医師が「今、一番したいことは何ですか?」と伺ったところ、故郷の北海道に帰りたいと吐露されました。Bさんの想う「家」はご実家だったのです。伺えば、ご実家にはお嬢様もいらっしゃるとのことでした。

Bさんはいつ急変してもおかしくない状態で、Bさん自身もそのことは百も承知でした。お見舞いに来た友人には「そんな身体で無理に決まっている」と言われたそうです。無理とわかればわかる程、Bさんはより一層故郷に思いを募らせていました。最期にあの懐かしい景色を見たい、空気を吸いたい、思い出が詰まった実家で過ごしたい。

Bさんの本心を知った在宅医療チームは、即座に「何とかBさんの想いを実現しよう!」と意見が一致しました。もちろん、リスクに対する心配がなかったわけではありません。しかし、思いを抑えたまま横浜市のご自宅で過ごすより、思いを北海道に向けた方がBさんにとって良い時間を過ごせるに違いないと考えました。私たちは空港までの介護タクシー、飛行機のチケット、空港から家までの介護タクシー、現地での在宅医療の手配など全て手はずを整えました。「飛行場までの道のりで何かありましたら対応させていただきます」という訪問看護師さんの言葉も支えとなり、現地に無事、Bさんを送り届けることができました。

北海道への帰郷から数か月後、Bさんは天国へ旅立たれたそうです。Bさんが帰郷されたいというお気持ちをくみ、私たちのバトンを受け取ってくださった現地の訪問診療クリニックから連絡をいただきました。

ご主人からのお話では「『故郷に帰りたい』と本人は言ってはみたものの、どうせ無理だろうと諦めていたところがありました。妻の想いを実現いただいてありがとうございました」とのことでした。

お一人おひとりの心の声に応えていきたい。とはいえ、あくまでも主は「患者様の想い」であり、我々はそれを実現する「共創関係」であり、主となってはいけないことを重要視しています。それが私たちの姿勢です。

※総合医療相談員は患者様、ご家族が安心して訪問診療をご利用できるように医療や福祉の相談に乗ったり、病院や施設、関係事業所との調整をしたりします。訪問診療クリニックによって呼称が異なったり、事務員が役割を担ったりします。

(この記事は事実を元に再編集しています。)

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