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コロナ渦の訪問診療

2022.05.05

コロナ渦の訪問診療

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染がおさまらず、この文書を読んでいる皆様も、美味しいものを食べにいったり飲みに行ったりすることもできず、旅行やレジャーなど、いろんな楽しみをずっと我慢していて、ストレスがたまっている方も多いかと思います。でも、私たちみんなの行動や、今後ワクチン接種がすすむことで、COVID-19の感染はいずれおさまっていくはずです。きっと、もう少しの辛抱です。みんなで一緒に頑張りましょう。

私たちのクリニックは、周辺の病院、あるいは都心部の病院から、末期がんの方の訪問診療の依頼を多数いただいております。コロナ禍の現在、病院内でのクラスター発生を防ぐため、一度病院に入院してしまうと、面会や外泊でご家族と会うことができず、そのまま最期を迎えてしまう可能性があり、最期まで自宅で家族と過ごしたい、という方が増えています。世の中の多くの仕事と同様に、私たちの行っている「訪問診療(在宅医療)」にも、COVID-19の感染拡大が大きな影響をもたらしています。

つい先日も、消化器系のがんで、高カロリー輸液と医療用麻薬の持続投与を受けながら自宅で過ごしている患者様が、節分にお孫さんと豆まきをした話をした後、ふと「家で過ごせて本当に良かったな。俺は幸せだな」とつぶやいておられました。まさにこれが私たちの大事な役割なのだとあらためて実感し、心が温かくなりました。

また、地域全体で高齢化が進む中、身体機能や認知機能も低下し、いよいよ通院が難しくなり、訪問診療を選択される方も増えています。そのような患者様は、えんげ障害(食べ物や飲み物を飲み込む力が衰えること)を合併することが多く、食事量が減少して栄養状態が悪化し、誤えん性肺炎を繰り返す方もいます。

コロナ禍の現在、明らかに誤えん性肺炎が疑われる場合でも、COVID-19感染を完全に否定することができないため、COVID-19感染者を診療していない病院への入院は断られ、COVID-19感染者の治療を行う病院の病床は逼迫しており、入院して治療を受けることが難しい状態が続いています。そのような患者様に対し、私たちは、訪問看護師やケアマネジャーなどの在宅療養をサポートする関係者と力を合わせて、点滴治療や在宅酸素療法、痰の吸引などの病院とあまり変わらない医療の提供を心掛けています。また、ご家族の介護負担を軽減するため訪問介護や訪問入浴などの介護保険サービスを利用していただくことで、自宅で治療を継続する体制を整えています。

もちろん、人間の命には限りがあり、どれだけ手厚い体制で治療や介護を行ったとしても、いずれは最期の時を迎えます。コロナ禍の現在も、アフターコロナの時代も、在宅療養生活において何よりも大事なのは、患者様ができるだけ苦しむことなく、家族や友人・知人とともに、住み慣れた場所で自分らしく最期を迎えられることだと思います。そのためには、私たちの仕事がとても重要だと実感しながら、雨の日も晴れの日も、寒い日も暖かい日も、日々、たくさんの患者さんやご家族と向き合いながら地域を走り回っています。

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